四月十日、笠大炊助と波多江種賢の両名が高祖へ帰ってきた。
その夜、城内の大広間では、抗戦か降伏か、運命を決する大評定が行われた。
論議は深夜におよんでも尽きない。
やがて雷山山脈の頂が白みはじめた頃、
秋月城に出していた使者が帰ってきた。
秋月氏は、原田とその祖先を同じとする関係から、
常に親しく行き来し、秀吉西下についても、
島津とともに抗戦する盟約をむすんでいたのだが・・・
秋月城の中にも、笠大炊助と波多江種賢らと同じ考えを持つ老臣がおり、
秀吉軍を向こうに回して抗戦することの不可能を説き、
自ら腹をかき切って城主を諫めたため、
秀吉軍に投じることとなり、島津攻めの先鋒に加えられたというのである。
しかし、この情報はあくまで抗戦を主張してきた城主原田信種にとっては、
かえって火に油を注ぐ結果となった。
「裏切ったか秋月!こうなれば高祖ひとり戦うまでだ。
生きて武門の恥をさらそうよりは華々しく武士の最後を飾ろうぞ
皆の者どうじゃ、老人どもは命が惜しくば戦わなくともよいぞ」
「殿、老いぼれの命など露ほどおしいとは思いませぬ。
ただこの場合、降参のみが原田家の今後の生きる道でござります。
もし、老いぼれの命にてお心が静まりますならば、このしわ首、いつでも差し上げまする」
血を吐くような老臣、笠大炊助の叫びであった。
「後に残った女房子供、出入りの商人、さらに民百姓の苦しみはどうなさるおつもりですか。
この高祖、怡土志摩の地が修羅の場となるばかりか、
未来永劫に逆賊の汚名をきせられまする」
両頬につたう涙もぬぐいをせず、必死の諌言をくりかえす老臣であったが・・・
「もう言うな大炊、これが武門の意地だ。拙者ひとりになってもこの意地はつらぬいてみせる。
戦いたくない者は去れ。これで評議は決した」
こうして高祖城は、ついに抗戦となった。
カテゴリ 糸島の歴史
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