ただひとりだけの別れー夫婦愛―
病院にお迎えにあがったとき、その方は一人でたっていた。
女性スタッフから受け取ったメモには女性の名前が書いてあった。
七〇代と思えるその方は気丈にみえた。
「羅漢でございます。お迎えにあがりました」
「どうぞよろしくお願いします」
故人様の横の座席に座っていただき、
私の運転する寝台車でご自宅へと向かう。
私たちとご遺族の方との関係は、この時からはじまる。
この寝台車のなかで、お話を聞きながら、
これからの葬送に必要な事項をイメージしていく。
「身内だけになると思うんです」
「主人が友人には知らせるなと言っていましたから」
「子供さんは・・・」
「子供はいないんです。私たちふたりだけでしたから」
自宅にお連れし、枕飾り(お参りができるようにする)などをすませた後のことだった。
その方はご主人の頬を両手でつつみなにやら語りかけている。
私はその姿を見るとはなしに見ていた。
しかし、決めることはたくさんある。
そのことをうながすと、すぐに気持ちを切り替えて、
てきぱきと受け答え、葬儀の段取はスムーズにきまっていく。
お寺様が「枕経」(亡くなられたら、すぐにあげるお経)をあげるそのうしろで、
その方と私の二人だけで手を合わせた。
お寺様が帰られた後、
「おひとりで大変でしょうが・・・」
「姪が最終の新幹線で来てくれるから、大丈夫です」
「朝になるんですか」
「いえ、夜中には着きますから」
「それでは私はこれで失礼します。また明日でて参ります」
―この夜は「仮通夜」となりましたー
これから「還骨法要」(収骨後の法要)まで担当させていただくこととなる。
・・・・
収骨を待つ間、遠方からみえた妹さんと話す機会を得た。
「おひとりで気丈に振る舞われて感動しました」
「姉夫婦は子供がいなかったせいか、絆が強いんでしょうね」
「私たちはつい子供にたよってしまいます」
「お互いに何かあったときは、自分が助けてあげなきゃと思うんでしょうか」
「でも、亡くなったときは、まっ白になったと言ってました」
柩が炉に消えていくとき、
気丈だったその方の嗚咽をはじめて見た。
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