お大師さん(おだいしさん)
托鉢中のカーラジオでいい話を聴いた。
NHKの視聴者参加番組で、電話での話。
『私のほっとする場所』というテーマをとりあげていた。
「うちの子は、お寺にある仁王門なんですよ」
「へえー小学三年生でですか?」
「あうんの像があるんですよね」
「そうなんです。仁王様と、なんか話しているみたいなんですよ」
「仁王様の前でじっと座っているんですよ」
「お祭りのときなんかも、あれ買ってとかねだったりするんですけど、
あっその前に仁王様にお参りしてこようって言って。
今日は祭りだから、仁王様もいつもよりうれしそうにしているよ、なんて言うんです。」
ラジオからきこえてくる母親の話を、ほほえましく聴きながら、
私も小学生の頃の記憶がよみがえっていた。
私たち(団塊の世代)の子供時代はだれもが貧しかった。
ちょうど、テレビが出だした頃で、まだテレビのある家はまれだった。
そして、テレビのある家は災難だった。
近所中の子供らが、夕ごはんどきにその家に押しかけるのだ。
(でも、まあそれを許してくれる時代でもありました)
『月光仮面』どきなんかは大変でした・・・
その頃、私が住んでいたすぐ近くに"おだいしさん"と呼ばれるお寺さんがあった。
(その頃の私はそのお寺さんの名字が、「オダイシ」というのだとずっと思っていた)
私たちガキどもは、時々テレビを見ようとお寺に押しかけた。
住職さんは私たちに言った。
「テレビを見るなら、ふつ(よもぎのこと)を持ってきなさい」
・・・そして住職さんはそのふつを乾燥させ、私たちが蚊に刺されないように、
それを燃やし、蚊取線香がわりにしたのだった。
今に思えば住職さんは、私たちに生活の知恵と、礼節を教えてくださったのだった。
このお寺は今はもう無い。
真言宗のお寺で、オダイシさんは、言うまでもなく「お大師様―弘法大師様」のことである。
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